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帝王の箱庭

TW1のキャラブログ。むげふぁんで判らない人は回れ右ー。

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始まりの誓い

それは一つの道の始まり。
それはヴァルクスが誓約の儀に臨んだ日の事。
 

「…これが…グリモア…。」

戦乱の世界に平和を取り戻すとされる、伝説の存在『希望のグリモア』。
眼前にて静かに輝く大樹に抱かれる水晶の塊を見つめ、ぼんやりとヴァルクスは呟いた。

やがて始まる誓約の儀。
儀式の中で儀式を受ける者が行う事は、事前に定められている。
ただ定められた通りの言葉をもって誓約とするだけ。

曰く。
ひとつ、自らの民を守り、助ける為の努力を怠らない事。
ひとつ、自らの力を高めるべく努力する事。

定められているのは、その言葉だけ。
ならば何を持って誓いと為すか、誓いに掛けるものまでは定められていない。
その先を決めるのは自分自身。これから歩く道の色を選ぶのは、自分自身。

ならば、誓いに何を掛ける?
答えは冒険者として生きる事を決めた時より既にある。我が望む道にある色はただ一つ。
痛みも味も無い言葉だけの誓いなど我には不要。

「誓おう。」

呟いて右の親指を口元に持っていき、尖った犬歯を指の腹に当てて、人のモノより鋭いストライダーのその牙で、噛み千切る。
口の中に広がる、鉄の味を飲み込んで、右足を一歩踏み込みそのまま右腕を振るう。
指に浮かんだ鮮紅の液体が数滴、グリモアが抱かれた大樹の根元へと飛び散って、すぐに土に染みて消えた。

「――我が血に掛けて。」

この足は最早歩く為だけにあらず。己が心の刃の具現。どれだけ血に染まろうと、己が眼前に立ちはだかる全ての敵を屠る刃と為そう。
それ故の字なればこそ。

誓約は己が血をもって掛けるものとすると、決めていた。

(…こんな生き方を選んだと知ったら、貴方は何と言うのでしょうね?)

それは決して答えを得ることのできない問い掛け。
此処より踏み出すのならば、その道、既に振り返ることは叶わぬのだから。
これから進むに我が道に涙は不要。なれば此処に置いて行け。涙も夢も望みも、遥か過去に捨てて行け。替わりに覚悟と意志を持って行け。――いざ笑え。
血に染まるのは己であれば良い。己が血の色の道を往く事で、少しでも誰かの血が流れずにすむのなら、笑って進む価値はそれで充分。その誰かは自分の知らない者で構わない。自分が歩く道の色など、知られなくて構わない。
他人の笑顔が好きだから。少しでも多くの笑顔を見たいから。どんな血塗られた道でも笑って進むと決めたから、我は今此処に在る。我が通ったその後に、栄光も賞賛も葬花も墓碑も不要。

何かを守るために生きるのなら、己の牙を磨くことに恐怖することに意味は無し。
守るために強さを求めるのなら、己の身を血で染める事を躊躇うこともまた意味は無し。
己の心に刃を置き、己の身が汚れていると知っていながらも――ただ守るために牙を剥け。
己の心を獣と化しても。

我の望んだ道は此処に在り、他になく。我が刻む足跡の色はただ紅く。
故に我が字は「鮮紅の足跡」。我は――血の色の道を往く唯の獣也。

そして誓約は交わされた。
牙持ちしモノがその牙で流した血を持って、一つの誓約が成就され、また一つ物語が始まる。
此処より、始まる。

~後書き~
無限で書いたはじめての…と言うか唯一のSSですねぇ。背後です。
……その内書いてやろうと思っていた、始まりの話。ヴァルクスの根源にあるもの。

…何だか今じゃ旅団では唯の腹黒狐ストと化してますが…本来はこういう人、の、は…ず…。(そこで自信なくすなよ。)

どれだけ胡散臭くても、笑いしか無いのはちゃんと意味があるんですよ、と言うこと。

ブログ引越ししたけど、この話は何となく残しておきたかったんです。始まりの話を。
初心、忘れるべからず。背後共々。

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